クリニックブログ

2017.08.29更新

こんにちは。市川市行徳の杉澤デンタルクリニック行徳の杉澤です。

 歯周病は歯と歯茎の境に停滞したプラークの中にいる歯周病原因菌による感染によって生じる病気です。歯周組織には炎症が生じ、歯茎の発赤や腫れ、出血が認められます。しかし、痛みなどの自覚症状は少なく気が付きにくい病気でもあります。気が付かないうちに歯周病が進行し、歯を支える歯槽骨など歯周組織を大きく失うことがあります。その失った歯周組織を再生することを目的とした治療を歯周組織再生療法と言います。今回はその歯周組織再生療法の中で、昨年末に保険診療に含まれた『リグロス』という歯周組織再生医薬品について書いていこうと思います。


◎まず歯周組織再生療法とは?
 歯周組織再生療法とは歯周病の進行によって失ってしまった歯周組織(歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質)を再生させようとする方法です。その方法は外科治療を併用して行い、失った歯周組織の部分に再生療法材を添加したり、再生部分のスペースを作るために膜を設置したり様々な方法により組織の再生をはかります。

 その失ってしまった歯周組織の再生において必要な条件があります。再生するための『細胞』とその成長を促進させる『成長因子』とその再生のための『足場』です。この三つの条件が満たされはじめて組織は再生していきます。

◎リグロスとは?
 リグロスにはbFGFという塩基性線維芽細胞増殖因子という成長因子が含まれています。bFGFにより失った歯周組織部の未分化間葉系細胞や歯根膜由来の細胞(歯周組織に分化しうる細胞)の増殖を促進させたり、再生のための新しい血管を新生し、歯槽骨などの歯周組織が再生されます。私が大学院時代に所属した講座において、このbFGFの研究が多く行われ、またその歯周組織再生効果も高かった記憶があります。

 成分としては今までやけどや床ずれなどの治療にも使われてきました。また、日本国内でリグロスを用いた歯周組織再生療法の臨床試験を数多く行われ、その有効性と安全性が確認されています。

 他の歯周組織再生療法は保険外診療となっていましたので、費用の負担が多くなっていましたが、リグロスは保険内治療として厚生労働省に認可されたため、比較的安価で治療を行うことが可能になりました。
 
◎リグロスによる歯周組織再生療法の流れ
 歯周組織再生療法は歯周外科治療に併用して行いますので、まず歯肉を切開し剥離し、歯の根の表面に沈着した歯石やプラークを取り除きます。歯根表面や周りがキレイになってくると、出血が止まっていきます。その後、歯槽骨欠損部にリグロスを塗布し、切開した歯肉を縫合します。

 だいたい1~2週間後に抜糸を行い、定期的にクリーニングにて清潔を保ち治癒を3カ月から半年ほど待ちます。その後、レントゲンや歯周ポケットの検査にて治療結果を再評価します。


◎適応症
 リグロスを塗布すれば治る!っというわけではございません。失った歯槽骨の欠損状態によっては、リグロスを用いても再生が期待できない場合があります。リグロスには『成長因子』が含まれていますが、液体であり再生の足場とはならず流れて行ってしまう恐れがあります。

 水平的に歯槽骨が吸収していて周りに残りの歯槽骨が少ない場合や、垂直に吸収しているがその幅が広く角度も大きい場合はリグロス単独による歯周組織再生の期待は薄くなってしまいます。その場合は、リグロスとほかの材料を併用し用いることが考えられます。


◎まとめ
 歯周組織再生療法における新しい材料としてリグロスが登場しました。そして適応症によっては失ってしまった歯周組織の再生が期待できると思われます。しかし、まだその治療方法は新しく歴史も浅く、またその適応症を十分検査し、慎重に用いることが必要と思われます。
 杉澤デンタルクリニック行徳でも、歯周組織の欠損状態によりますが、検査し患者様と相談した上で、リグロスを用いた歯周組織再生療法を行っております。お気軽にご相談ください。

杉澤デンタルクリニック行徳
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